1.紫外線の分類
一般に紫外線と呼ばれるものは、可視光線に隣接した短波長側領域にあり100nm~400nmの波長を持つ電磁波の総称である。紫外線は波長により、さらに3つの領域に区分されており、それぞれUV-A(315~400nm)、UV-B(280~315nm)、UV-C(100~280nm)と呼ばれている(IEC国際電気標準による)。いずれの紫外線にも蛍光作用がある。
紫外線の区分と主な作用・用途
区分 |
波 長(nm) |
主な作用・用途 |
UV-A |
315~400 |
色素沈着。日焼けサロン、印刷、複写。
*ブラックライトとも呼ばれる |
UV-B |
280~315 |
ビタミンD生成、DNA損傷、眼炎、紅斑。 |
UV-C |
100~280 |
オゾン生成。殺菌、脱臭、空気洗浄。
*100~200nmを真空紫外線(V-UV)と区別する場合もある。 |
2.太陽光に含まれる紫外線
太陽光線には、本来可視光線ばかりでなく紫外線・赤外線などかなり広い範囲の電磁波が含まれている。しかし、太陽光は地表に達する前に、オゾン層を通過するため、太陽光に含まれる短波長の紫外線(UV-C)は、このオゾン層でほとんど吸収され、地表に到達する紫外線は比較的波長の長いUV-A・Bだけになる。太陽光線の量は関東地方で日中・快晴時におよそ10万ルックス程度になり、この中に含まれる紫外線は約5%、強度でいうと約60W/m2 = 6,000μW/cm2に相当し、その90%以上はUV-Aになっている。
3.人体に対する影響
太陽光線の場合、地上まで到達する紫外線はUV-Aがほとんどであること、人体は太陽光線を利用し適合するようにつくられていることなどにより、過剰な暴露・体質的な不適合を除けば通常あまり障害を受ける事はない。しかし、人工光源から発生する紫外線は光源の種類によりUV-A~UV-Cの全域あるいは特定波長の紫外線を発生するため、利用にあたっては安全上の注意が必要である。人体に悪影響を及ぼすといわれている紫外線の波長は、320nm以下の短波長側(UV-B・UV-C)にあり、目の障害(眼痛・充血・角膜の炎症など)・紅斑や皮膚のDNA損傷による癌の誘発などがあげられる。溶接アーク光には250nm以上のUV-B・UV-Cが大量に含まれており、また殺菌灯は250nm付近のUV-Cを主波長としており、これらの光源を裸眼で見たり、無防備で人体を光源に曝すことは危険な行為である。
一方、UV-Aのみを選択的に発生させているブラックライトは蛍光発光などに利用されており、エネルギーのピークが波長365nmにあるため、300nm~400nmの範囲全域の紫外線を発生している太陽光線に比べても短波長成分が少ないので、より安全な光源といえる。ただ、日焼けの作用があるのでこれを好まない人は、サンスクリーン剤・手袋の着用など直接皮膚に紫外線が当たらないようにすると良い。また、光源を直接覗き込むことは厳禁である。ブラックライトは可視光線による眩しさを感じないため、うっかり直視してしまいがちであるが、高エネルギー光源であることに変わりはないので注意が必要であるため、作業中は紫外線防護のメガネ・ゴーグル着用が望ましい。
4.ACGIHの勧告値
ACGIH(American Conference of Governmental Industrial hygienists:米国労働衛生専門官会議)の勧告では、ほとんどの労働者が健康上の悪影響を受けずに紫外線の下で労働できるUV照射条件についてTLV(Threshold Limited Values:閾値)を定めている。この中で、近紫外線(320~400nm)領域については、16分以上照射を受ける場合は裸眼に対して1.0mW/cm2(1,000μW/cm2)以下であることとしている。
※ 勧告値は、裸眼に直接入射するUVの強度であり、照射面での強度ではありません。実際に目に届くUVは照射面から目までの距離を加算して計算する必要があるので、照射面の反射率を100%としても照射面強度の約1/4になります。また、さらに顕微鏡等を介して観察する場合は光学系での反射・吸収、斜光入射・拡大倍率による減衰により大幅に減少します。