品質保証を通して社会に安全と安心を提供する

What is NDT / Marking

浸透探傷試験の原理

PT(Penetrant Testing)またはLPT(Liquid Penetrant Testing)と呼ばれる探傷試験方法で、試験対象の材質にかかわり無く殆ど全ての材料、製品の表面検査に使用できます。試験体の表面に開口している微細なキズに、見えやすい色や輝きを持たせた浸透性の良い液体(浸透液)を浸み込ませ、再度表面に吸い出すことによりきずを拡大して見つけ出すことができる方法です。

浸透探傷試験製品

染色浸透探傷剤
染色浸透探傷剤
  • スーパーチェック
  • エコチェック
蛍光浸透探傷剤
蛍光浸透探傷剤
  • スーパーグロー
  • スーパーグロー(AMS適合品)
  • エコグロー
浸透探傷装置
浸透探傷装置
  • 水洗性蛍光浸透探傷装置
  • 無排水蛍光浸透探傷装置

浸透探傷試験

浸透探傷試験は一般に以下のような手順で行ないます。

前処理→浸透処理→洗浄処理→現像処理→観察→後処理

(1)前処理
浸透探傷試験では、試験体表面に開口しているきずを対象にしているために浸透液を浸み込ませる(浸透)工程が一番重要であります。そのため、表面開口きず中への液体の浸透を妨げる塵埃、油脂類又は液体などを除去するため、あらかじめ、石油系溶剤、有機系溶剤などにより洗浄する工程を前処理と言います。

(2)浸透処理
浸透処理は、毛管現象を利用した方法で、表面に開口している割れやピンホールなどの微細な欠陥を持つ試験体に対して、人の目で知覚しやすい色(染色浸透液)や、輝き(蛍光浸透液)を持たせた液体をきず内部に浸透させることを言います。

(3)洗浄処理
浸透処理が終了した時点で試験体表面に付着している余剰浸透液を除去する工程を言います。
一般的に、浸透液の種類には水洗性、溶剤除去性、後乳化性のものがあり、洗浄処理法も各浸透液の種類によって異なります。

(4)現像処理
現像処理とはきず部分に浸透し保持されている浸透液を、毛細管現象を応用して浸透液を表面に吸い出す工程を言います。現像剤粉末を試験体表面上に形成させると、微細な隙間を無数に持った膜がきず内部から浸透液を吸い上げ、きず部分を適度に拡大し、肉眼で容易に検出できるようになります。

(5)観察
現像剤によってきず内部から吸い上げられた浸透液は試験体表面の現像被膜上に指示模様として現れます。ピンホールは斑点として、割れなどは線状になって指示されます。通常、この模様を目視観察し、きずの存在を知ります。

浸透探傷剤

浸透探傷剤は通常、浸透液(P)、現像剤(D)、除去洗浄液(R)の三種類の薬剤を使います。
浸透探傷法には赤色の染色浸透液(Dye Penetrant)を用いる染色浸透探傷法と蛍光発光を利用した蛍光浸透液(Fluorescent Penetrant)を使用する蛍光浸透探傷法があります。また、化学的な性質が異なる以下の種類の浸透液が使われています。

(1)水洗性浸透液
浸透液の多くは、油が基本成分となっているため、余剰浸透液を除去するために水洗浄の適用が困難となります。そこで、浸透液の成分にあらかじめ乳化剤(界面活性剤)を添加しておき水洗浄を可能にしたものが水洗性浸透液です。

(2)溶剤除去性浸透液
油を基本成分とした浸透液で、余剰浸透液の除去には水ではなく有機溶剤を洗浄液として使用します。通常、ウエスなどで余剰浸透液を十分拭き取った後、洗浄液を浸み込ませたウエスで丁寧に拭き取るなど適用には注意が要ります。

(3)後乳化性浸透液
後乳化性浸透液は、乳化剤が添加されていない浸透液を言います。浸透処理後に、乳化剤の中に浸漬するか、あるいは乳化剤を流しかけることによって、乳化剤を余剰浸透液中に溶け込ませ水洗性を得るタイプの浸透液です。

(4)現像剤
現像剤の主成分は無機質の微粉末で、これをそのまま使用する乾式現像剤、水に懸濁した湿式現像剤および 粉末を溶剤に懸濁させ、エアゾール缶に充填した速乾性現像剤があります。

各種浸透液とその用途

下の表は、種々な探傷剤を用いる浸透探傷試験の極めて一般的な適用範囲を示したものです。

各種浸透液とその用途

基本対象項目 対象項目の細部 水洗性蛍光浸透液 後乳化性蛍光浸透液 溶剤除去性蛍光浸透液 水洗性染色浸透液 後乳化性染色浸透液 溶剤除去性染色浸透液
欠陥の種類の大きさ 微細な割れ、幅が広く浅い割れ        
疲労割れ、研削割れなど幅が非常に狭い割れ        
試験体 小型の量産部品、ねじやキー溝などの鋭角な隅部          
粗い面の試験品        
大型部品や構造物を部分的に探傷する場合        
環境条件 試験場所を暗くすることが困難な場合      
水道及び電気設備のない場合          

出典:日本非破壊検査協会編 「非破壊検査技術シリーズ」
浸透探傷試験(1989)、P-9、表1-1